『美しく燃える森』
『美しく燃える森』
なんとロマンチックな言葉だろうか。
圧倒的に現実離れした詩的な言葉だ。
だって実際に森がバンバン燃えてたら「美しいねぇ」じゃなくて「あ!やばい!」って口からまず出るでしょう。
東京スカパラダイスオーケストラ / 美しく燃える森 - YouTube
いい曲。PCの人は聴きながら適当に見て欲しい。
サムネイルの民生が非常にブサイクなのが残念だが歌はとてもセクシー。
話変わって数年前のことだ。
うろ覚えだがフィリピンで会った友人がオーストラリアのキャラバンパークでの珍事件を教えてくれた。まずはその話から。
キャラバンパークとは平たく言えばキャンプ場。
オーストラリアに来ているバックパッカーや現地の旅行好きが集まるところだ。
そこでは知らない者同士でも夜な夜な集まり一緒にBBQをしたり酒を飲んだり、欧米人の中には大麻を吸って精神を解放させてしまっている輩もいる。
大抵のキャラバンパークは郊外にある。
そのため周りは基本的に森だったり山だったり。
たしか彼の滞在していたキャラバンパークもこれに溢れず隣が山だったと言っていた。
そこでみんなで集まってキャンプファイヤーをしていた時、すでに事件の口火は切られていた。いや、文字通り「火」が飛んでいたのだ。
みんなで楽しく火を囲んでいたはずがいつの間にか別の所から煙が上がってたちまち炎が燃え広がり、一目散に各々のテントや荷物を持って走って火の手から逃れたという。
その後も炎の勢いは止まらず、瞬く間にそのまま一つの山が焼けたらしい。
難を逃れた彼だが、火の気が立つ前に「あるもの」を見ていたのだ。
それは大麻でぶっ飛んでいたであろう欧米人が何を思ったか火炎瓶だか松明を森にぶん投げていたという一部始終である。
事件。それは事件だよ。そいつお縄。
が、山一つ燃えたんだから大事になるかと思いきやなんと
「自然火災」
という一言の前に問題は終結したという。
『む、無茶苦茶だ。
そんな簡単に片付けて良いのか?
自然火災って。
広大な山が焼けてなんだったら人も死ぬところだったのに。
というか自然火災って?
自然に山が燃える訳な…』
燃えるのです。
ここオーストラリアでは。
「美しいn…あ!やばい!」
もう仕事場の数キロ先で燃えている。しっかり煙が届いてる。
森が燃えてるよ。狂ってる。大事件。
焼畑とかそんなレベルじゃない。
ここでざらっと説明。
太陽エネルギーによって引き起こされる自然発火でブッシュファイアと言う。
(一部人為的な要因のものも含むけど今回はパス)
ゾンビに食らわすジョジョの波紋の話ではない。
今はジョジョの話は置いておいて。
非常に乾燥しているオーストラリアでは、落雷、草木同士の摩擦、放棄されたガラスなどによって集められた太陽エネルギーによって山、森、野原が燃えるのだ。
「ギャドン!」
先述した自然発火の最後の要因に関してはどう読んでもジョジョのエイジャの赤せk、
ジョジョは置いといて、
詰まる所、シーザー・アントニオ・ツェペリの最終奥義であるシャボンレンズと全くもって同じ原理である。
…枯れ木なんかが真っ黒に感光してしまったのである。
加えてオーストラリアに多く自生してるユーカリは油分を多く含んでおり燃えやすく広がりやすい。
注がなくても火に油なのである。
場合によっては農耕地や放牧地、終いには住宅地にまで広がることもある。
そのように危険が予期される場合、消火活動は消防隊やボランティアが行っている。
そして先に燃え広がるであろう地帯を囲むように先に燃やしてしまうのだ。
そう、炎を操るのだ!
なんとなくブッシュファイアを強引にねじ込んだジョジョ第二部で学んだところで本題。もうジョジョはいい。書くモノが突然バカっぽい方向に走り出してしまう。
仕切り直してブッシュファイア、今までのところ、突然の自然火災かつ太陽エネルギーによるものと非常にタチの悪い現象に思えるが一口に「災害」と言えない。
というのもこのブッシュファイアがオーストラリアの大自然のライフサイクルの中で一役買っているのだ。
今日、仕事終わりに宿の近くの森に一人でコソコソ行ってきた。
万一の事を考えてあまり一人で出歩くなと言われていたが「燃えた森に散歩に行かないか?」と誘ったところで快諾してくれるような人はなかなかいない。
燃えた森到着。焼け焦げた樹皮と炭色の地面を見れば過去にここまでブッシュファイア来ていたことがわかる。
なんだか少しティム・バートンの世界に入り込んだような視界。
ティム・バートン好きじゃないけど。
見るからにOverKilledな「死んだ木」。
散策中に見つけた廃車。車体とタイヤが焦げてないのでブッシュファイアが発生した時にはなかったものだけどもの寂しい感じがこの森の雰囲気にじっとり溶け込んでいた。
こいつは森と一緒に燃えていたかもしれない。森と同じ色をしていた。
ここまで寂しくて暗い「瀕死の森」に見えるが明るいものも。
真っ黒い樹皮から伸びた新芽。
焼け焦げてもう死んだ様に見えたが意外にも木は生きていた。
焦土を掻き分けて出て来た命の痕跡も発見。
新芽を食べるワラビー。ちらほら緑も見える。
ライフサイクルもうすでに始まっていた。
写真を見るとわかるのだけどブッシュファイアがあっても決してその土地が何も無い焼け野原になってしまう訳ではない。
樹木の下部だけ焦げたり、丸焦げになっても実は表面だけだったりと流石植物たちは我々が思うより逞しくしなやかなのだ。
これは聞いた話だが、ブッシュファイアの時に花が咲く植物や種子の放出をその熱を頼りに飛ばす樹木もあるのだとか。なんという生命力。
一方、炭になった植物や生き物はそのまま土に帰り新な命の芽吹きの手引きをする。
燃えた森は決して死なない。森は森の意思を受け継ぐのであるッ!
そう!!
それはッ…!
まさしく鮮血のシャボンッッ!
ジョジョのコマを挟むたびにバカバカしくてやってられないと思ったがオチまで辿り着いた。頑張った。
最初は「遠くの森が燃えてるのに何みんなそんなスンってしてんのさ!大丈夫かよ。」なんて思ってたけど今じゃもう僕もスンってしてる。「けむりくせぇ」って。
そういえば前に本で読んだ動的平衡というのはこういうものだろうか。
ミクロで見ると動いているけどマクロで見ると変わらない。
森は常にどこかが燃えているが大地は新しい芽を出しながら依然として一定の姿を保っている。
燃える事でライフサイクルが循環するなんてなかなか美しいサイクルと思えるし実際にブッシュファイアをこの目で見てみるととても美しい。
日が落ちた後のブッシュファイアがまた格別。
日本じゃ燃えた森をビール片手に眺めるなんてなかなか出来ないでしょう。
電話に持ち替えて119番。
今日も森は美しく燃えている。